100万円から始めよう
長期投資、投資すべき銘柄、取引方法、分散投資などが分かったところで、より具体的な話を進めて行きましょう。まず、「いくらから始めるか」ということです。
10~30くらいの適した銘柄に現物取引で分散投資をし、長期投資をしていくというのがこれまで解説してきたことです。(ステップ8:短期投資か長期投資か参照)株式投資を始めるにあたってはあまり手元資金がないという人も多いと思いますが、最低でも100万円くらいは持った状態で始めたいものです。
100万円あれば、10銘柄に対してそれぞれ10万円の分散投資が可能となります。10万円以下で買える銘柄もたくさんあるため、そのような銘柄を買うのがおすすめです。(ステップ12:分散投資のすすめ参照)
買い増しの勧め
もっとも、100万円の元手を地道に増やしていくのではなく、本業からの収入のうちいくらかを継続的に投資に回すことが資産形成のためには重要です。
例えば、毎月10万円を投資に回し、すでに投資した10銘柄のうち有望なものや株価が下がったものをさらに買い増しするとか、それ以外に買いたいと思っている銘柄があるならばそれを買うといった塩梅です。
お勧めなのは前者のようにすでに購入している銘柄の買い増しです。なぜならば、初回の投資に当たってその企業のことは詳細に調べる必要があるため、追加資金を投じる際に自信をもって投資できるからです。すでに投資した銘柄の雲行きが怪しくなっていたり、より有望な銘柄が見つかっていたりした場合に新規の銘柄を取引するというのが賢明な手法であるといえます。
ちなみに、現在20歳の人が100万円を元手として投資を開始し、今後の人生で退職するまで45年間にわたって毎月10万円を投資に回し、途中で引き出すことなく平均年利5%で複利運用することに成功した場合、45年後には2億円以上に増やすことができます。単に現金として貯めていたならば5500万円ですから、その4倍くらいに増やせるということになります。
10万円からでも可
もし100万円をすぐには用意できない場合、いくつかの方針が考えられます。
1、100万円が貯まるまで待つ
ひとつは、100万円が貯まるまで待つという方針です。毎月10万円を貯められる人ならば、10ヶ月の期間が必要となりますから、その間は投資の古典を読む、証券分析を緻密に行っていつでも買えるようにしておくなどして過ごせばよいでしょう。今後の長き人生を見据えて投資をすることを考えれば、10ヶ月の時間的損失はそれほど大きなものではなく、取り組み方次第では利益にもつながります。
2、10万円を積み増しながら分散投資していく
もうひとつは、10万円から始めるということです。そして、毎月10万円を投じるなどと決めておき、月に1銘柄ずつ買い増ししていき、10ヶ月後に10銘柄の分散投資が完了しているという形に持っていくのです。
しかし、この方法には難点もあります。100万円を準備して分散投資を行なえば、ある銘柄が下がってもある銘柄が上がることによって、全体としては利益になっている(あるいは損失がほぼゼロとなっている)実感を得ることができ、悠然と構えることができます。分散投資の有意性も知ることができるでしょう。
ところが、1銘柄ずつ買い増ししていると、買っている銘柄の損失を相殺する他の銘柄がないことから、自分の手法に自信を持てず、有益な経験を積むことができない場合があるのです。あるいは、下手に利益を出してしまうと、一点張りでもいけるのではないか、などという誤った考えを抱いてしまう危険性もあります。したがって、できるだけ初回の投資の時点で分散投資が完了するに越したことはありません。
3、10万円を分散投資する
次に考えられるのは、10万円を1万円ずつ10銘柄に分散投資するという考え方です。この考え方は、2の考え方よりも勝っています。投じる金額はともかく分散投資ができるため、より意味のある経験を積みやすいからです。
もっとも、この方法では100株や1000株といった単位で買うことはできないため、ミニ株投資(定められた単位以下でも買うことができる制度)をすることになります。ミニ株投資には手数料が高い、正規の時間で取引ができないなどの色々なデメリットがあります。
とはいえ、取引のしにくさはあるものの、まとまったお金ができたらすぐに通常の投資に切り替えていけばよいのですから、長期投資をしていく上でこれはあまり問題にはなりません。そのため、どうしても元手の100万円を貯めるのに時間がかかってしまうがその間にも経験を積みたい、という人などは10万円を分散投資すると考えて取引を開始するのが良いでしょう。
次の記事は「ステップ14:株式投資で経験を積むことの大切さ」です。