株式投資の古典を読む
STEP6において、株式投資で最も重要なことは「損をしないこと」であると述べました(ステップ6:株式投資で一番大切なことは「損をしないこと」参照)。損失を防ぐことを学んだならば、次に株式投資で儲けていく必要があります。そのためには、投資家は勉強をしなければなりません。このことは、これまでも随所で述べてきたことです。勉強をせずに勘などに頼れば、ギャンブルになってしまいます。
では、どのようなことを勉強すればよいのでしょうか。投資の勉強というと、投資手法を説いた色々な本や、投資雑誌や経済誌などを読むことが勉強であると考える人が多いと思います。しかし、それ以前にもっと大切なことがあります。それは、投資の原則を学べる良著、すなわち投資の古典といわれるような本を読むことです。
例えば、ベンジャミン・グレアムの著作などが代表的なものです。ベンジャミン・グレアムは証券分析の手法や割安株投資を確立した人であり、ウォーレン・バフェットの師匠としても名高い投資家ですが、彼が投資手法を確立する以前は当たり前のように投機が行われていました。つまり、株式投資にギャンブルの色が非常に濃かったのです。
しかし、人々が投機に熱狂した結果、かの有名な世界恐慌が起き、それを経験したベンジャミン・グレアムは「どうすればこの大暴落の中で投資を成功させることができるのだろうか」ということを考えました。その結果、大暴落の中でも倒産せずに復活する企業を見つける方法や、平常時や株高のタイミングでも儲けられる企業を見つけられる方法として、証券分析の手法を確立したのです。
今や、証券分析を行なった上で投資を行うのは当たり前のことになっています。しかし、なぜ証券分析が必要となったのか、その背景を知ったうえで証券分析の古典的手法なども学んでおくことは非常に有益です。ベンジャミン・グレアムの証券分析は現代でも十分に活用できるものであり、例えば対象となる企業が危険かどうかの判断などに活用できます。
よく、ベンジャミン・グレアムの時代と現代は異なるから、当時書かれたものは古すぎてあまり役に立たないという意見を耳にします。しかし、それは表面だけを見ているのであり、ベンジャミン・グレアムの思想の根底に流れている思想を汲み取る力のない者の言い分です。
やはり、古典というものは深く味わえば味わうほど、学ぶところの多いものです。出版されては消えていく数多の投資関連書籍を何冊も読むくらいならば、出版後何十年も読み継がれているような数冊の書籍を読んだ方がよほど有益です。
以上のことから、まずはベンジャミン・グレアムの書籍をお勧めします。『賢明なる投資家』と『証券分析』がそれに当たります。『証券分析』はかなり専門的かつ大部であるため、『賢明なる投資家』から勉強することをお勧めします。
『賢明なる投資家』は、万巻の投資関連書籍を読んだウォーレン・バフェットをして「これまでに書かれた投資に関する書籍の中で、最高の書籍である」と言わしめたほどの本です。読まずにはいられない、そんな本です。
読み手が投資に関する基本事項は知っているものとして書かれている本であるため、最初は分かりにくい部分もあるかもしれません。しかし、読んでいる内に次第に分かってくることでしょう。損をせずに満足できるレベルの利益を得られる堅実・賢明な投資はいかなるものであるかが力説されています。私は『賢明なる投資家』および『証券分析』を全文手書きでノートに筆写しましたが、非常にためになりました。投資に挑むに際しての腹が練られたように思います。
投資に関する古典を読み、しっかりと基礎ができたうえで投資を行なえば、他の投資家に大きく差を付けた状態で投資を始めることができます。古典などには目もくれず、小手先の技術に固執して利益を求める投資家が非常に多いからです。古典で基本を作り、そのうえで投資雑誌や経済誌なども読み、情報収集やデータ分析なども真面目に行うという勤勉な投資家になれば、お小遣い程度の利益を出していくことは十分に可能となります。
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