有価証券報告書
有価証券報告書とは、全上場企業が年に4回発表する報告書です。第1四半期~第3四半期のそれぞれの報告書を四半期報告書、第4四半期に出される年間を総括した報告書を特に「有価証券報告書」と呼びます。四半期報告書をすべて読むのではなく、まずは最新の有価証券報告書を読むのがおすすめです。
この報告書には、企業情報、事業の状況、設備の状況、株式の状況、経理の状況など、その企業の関する情報がかなり詳しく記されています。有価証券報告書を細かく読めば、その企業について公表されている範囲内ではほとんど知らざることはない、という状況になることができます。
では、書かれている情報とポイントを見ていきましょう。
企業情報
ここには、売上高・経常利益・純利益・純資産・総資産・1株当たり純資産・1株当たり当期純利益の推移や事業の内容が書かれています。企業が好調であるかどうかを知るためにはぜひとも目を通したいものです。
事業の内容についても詳細に書かれています。その会社がどのような事業を行なっているのか、つまりどのような製品を作っているのか、どのようなサービスを提供しているのか、どのような商品を売買しているのかなどについてです。事業内容の推移についても書かれており、例えば特定の製品の需要に変化があった場合などには、ここにその旨記載されています。
関係会社の状況も記載されています。各関係会社の住所・資本金・事業内容・関係内容などを知ることによって、企業への影響を把握しておくことができます。
従業員の状況にも目を通しておきましょう。何人くらいの従業員がいるのか、平均年齢は何歳か、平均勤続年数は何年か、平均給与はいくらかなどを知っておけば、これも資料となります。
事業の状況
事業の状況の欄には、業績の概要が記されています。例えば、今期の業績はどうであったか、為替や資源価格の影響はどうであったか、世界的な出来事の影響をいかに受けたか、どのような計画で事業を行い、その結果業績はどうなったかなどが記されています。各セグメントの業績についても言及されています。
次に、生産・受注・販売の状況も見ておきましょう。これらが伸びているかどうかは業績に大きく影響するところです。
注目しておきたいのは、対処すべき課題や事業のリスクについての記載です。対処すべき課題が明確になっていることや、事業のリスクをしっかりと把握していることは、企業の今後の成長に非常に重要なことです。ここを読んだ時に「甘いのではないか?」と思えるならばその株を買わないこともできますし、「しっかりと分析できている」と思えるならば自信を持って買うことができます。
そのほか、研究開発活動に関する記載もあります。研究開発はその企業の今後の発展に大きく影響するものですから、研究開発に取り組む姿勢を正しく把握しておくことは大切なことです。
設備の状況
設備は、製造会社などで特に重要なことです。新たな工場を設立したり、生産効率向上のための設備投資を行うことによって、生産能力は増し、より多くの受注が可能となり、売上を伸ばしていくことができます。そのため、設備の新設や除却の状況を把握しておくことが大切なのです。
もっとも、設備投資は企業の規模によって異なり、それほど頻繁に行われないことも多いため、多くは記載されていないこともたくさんあります。
株式の状況
株式の状況を見れば、大株主はどこ(誰)であるのか、それぞれどれくらいの株式を所有しているのかなどが分かります。株式会社は株主の意向を受けて運営がなされていくため、大株主が変われば運営方針も変わる可能性があります。そのため、株主の推移には注意を払っておきたいものです。
自己株式の取得状況も見ておきましょう。自己株式の取得とは、その企業が株主から株を買うことです。株は買われるほどに株価が上昇するのですから、企業が余剰資金で自己株式を取得してくれれば、株主は値上がり益を得ることができます。そのため、積極的に自己株式取得を行なっている企業であるかどうかは把握しておくべきです。
配当政策についても書いてあります。これを見ることによって、業績に応じた利益配分がきちんと行われているかどうかを知ることもできますし、増配や減配の状況も知ることができます。
このほか、各企業は何らかの理由で他の企業の株式を保有しているものです。純粋に投資目的として保有する場合もありますが、取引関係を円滑化するために株式を保有することもあります。後者の理由で他企業の株式を保有しているならば、どのような銘柄を保有しているかを調査してみましょう。どのような企業とどのような関係を持っているかを知ることができます。
経理の状況
経理の状況を見ると、財務諸表が記載されています。これは非常に重要なものです。
財務諸表は貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書に分けられます。どれも大切なものですが、まず見るべきは貸借対照表です。貸借対照表には、流動資産(1年以内に現金化可能な資産)がどれくらいあるか、流動負債(1年以内に返済しなければならない負債)がどれくらいあるか、その他にも固定資産や無形固定資産、固定負債、純資産などが書かれてあります。この全てに目を通しておきましょう。
特に、流動資産よりも流動負債には注意を払いたいものです。例えば、流動資産を見たときに現金が非常に少なく売掛金が非常に大きいような企業は、経営が下手である可能性があります。売掛金とは数ヶ月後の支払いを期して売った未回収のお金のことであり、貸倒リスクもあるものです。やはり、できるだけ現金が多いに越したことはありません。
また、棚卸資産も資産には違いないのですが、あまりにも多い場合には過剰生産に陥っていないか、需要低下が起きていないかなどを調査することもできます。また、流動資産よりも流動負債の方が大きい場合には赤字経営になっているわけですから、そのような企業に投資すべきではありません。
以上のように、有価証券報告書の各項目の意味を知りながら見ていけば、企業の状況を詳しく把握できるようになります。四季報で探して目を付けた企業があれば、それをすぐに買ってしまうのではなく、有価証券報告書を読んだ上で自信を持って投資できる場合に買うべきです。(ステップ17:【株式投資】証券分析の方法~四季報の利用~参照)
ここでは全ての項目について説明することはできませんので、参考になる書籍として『有価証券報告書の見方・読み方(清文社刊・あずさ監査法人編)』を紹介しておきます。
次の記事は「ステップ19:【株式投資】注文方法は成行と指値で」です。